ビル防災 ~まち一番の安全・安心なビルを目指して~
私たちは複数年度に亘って計画し、一つ一つにねらいを定めた、実践的な防災訓練に取り組んでいます。2011年の東日本大震災を機に、会社として、これまで以上に「安全・安心・防災」を最優先に位置付け、まず社内全体の防災意識を高めることを重視した取り組みに着手しました。例えば、シミュレーションゲームのように、災害状況のシナリオが変わっていったり、ボードの上でメンバーが駒になって動いてみたり、実際の災害現場で自分達がそれぞれ何をすべきなのかを考えながら進行していく形式の防災訓練※は、その取り組みの代表例です。
その他、いつどこで発生するかがわからない実際の災害に備え、ビルの全館防災訓練※の際に、火災発生想定階や時間帯を敢えて明らかにせずに訓練を実施するといった取組みも実施しており、先進的な事例として様々な企業が見学に来るような取り組みとなっています。
また、私たちは防災の分野においても、PDCAを回していくことは大変重要なことであると考えています。一回一回の訓練が終った後は必ず振り返りを実施し、課題や改善点を分析しながら次の訓練に活かすようにしています。
常に進化し続ける訓練 - これまでも、これからも、私たちの伝統として受け継ぎながら、まち一番の安全・安心なビルを目指して参ります。
※新型コロナウィルスの感染拡大の影響を受け、実施方法は一部変更。
災害対応・地域との連携
名駅四丁目地区においては、複合商業施設を含む6棟の大型ビルを保有する利点を活かし、火災が発生した際には、他のビルで避難場所を確保したり、各ビルの防災センターが互いに連携しながら避難誘導を行ったり出来るよう、面として有効的な避難計画を立案しています。
また、名古屋駅地区全体としては、近隣施設や行政と連携しながら、万一の水害発生に備えた取り組みや、大地震発生に伴う帰宅困難者対策への取り組みにも積極的に参画しています。
名古屋駅地区をメインエリアとするトヨタグループのデベロッパーとして、使命感と誇りを持ちながら引き続き安全・安心への取り組みを推進して参ります。
カーボンニュートラル
名古屋駅地区で当社が保有する主要ビルにおいて、CO2フリーの再生可能エネルギー由来電力の導入、一部の施設ではガスコージェネレーション発電電力をカーボンオフセットすることで、各ビルで使用される電力量のすべてが実質CO2排出量ゼロのエネルギーである状態を実現※1しています。
この取り組みは、地球温暖化対策の推進に関する法律におけるCO2排出量の削減、SBT※2といった国際イニシアチブへ対応といった観点のみならず、ビル入居企業様が自社で再生可能エネルギー由来電力を利用していると認められることによる、ビル入居企業様自身の環境配慮に向けた企業活動の推進にも寄与するという観点でも大変有効であると考えています。
次世代のためにも、弛むことなく一歩一歩、脱炭素に向けた取り組みを推進して参ります。
廃棄物削減
遡ること20年以上。「私たちにできる環境保全活動」の一環として、当時の第二豊田ビル(現在のシンフォニー豊田ビル敷地内にかつて存在した当社保有オフィスビル)において廃棄物の計量課金制度を導入しました。それによって、テナントの皆様は、種類別に廃棄物の量が把握でき、その量を減らす努力をすることで、コスト削減に繋げながら同時に廃棄物そのものの削減を目指すことができます。以降、新たに竣工するビルはもちろん、その他主要ビルにおいてもこの制度は導入され、地球環境に配慮した廃棄物処理の取り組みを長きに亘り継続しています。
かつて、世界的にも有数の消費都市であった江戸は、同時に、サステナビリティの観点においても、優れたエコシステムを備えていた街と言われます。私たちもそのような街を実現することを目指して、ビル入居企業様と共に出来る限りの廃棄物の削減・再資源化を図りながら、循環型社会の実現に向けた歩みを進めて参ります。
シンフォニー豊田ビルにおける取組
シンフォニー豊田ビルでは低炭素社会の実現をめざし、省エネルギー化に貢献できる様々な最新設備を導入することで、環境への配慮を行うと共に、建築物の環境性能評価(CASBEE)においてSランク認証を取得しました。
また、私たちは風や緑を感じる場の提供という視点も大切にしています。シンフォニー豊田ビル建設の際には、道路付け替えによる敷地の集約化と共に、隣接する「西柳公園」の整備も合わせた街路整備を実施し、人と緑に溢れた賑わいの空間「グリーンモール」を創出しました。このような空間は、ふとデスクワークからの気分転換に来られたりするような、憩いと潤いの場として多くの人に利用されています。
ミッドランドスクエアにおける取組
ミッドランドスクエアでは、負荷抑制・自然エネルギーの有効利用などを行って、省エネルギーに貢献しています。また、ビルのロングライフ化、省資源、廃棄物の削減のほか、ヒートアイランド対策として屋上緑化や、地域冷暖房システム(DHC:District Heating & Cooling)、コージェネレーションを採用した地域エネルギー供給システムなどの導入を通じて、未来を見据えた「人と地球に優しい都心エリア」の実現を目指しています。
こうした環境への配慮の結果、建築物の環境性能評価(CASBEE)においてSランク認証を取得しました。竣工後には、導入したシステムが、設計で意図した効果を発揮しているかを検証・改善するコミッショニング活動を通じて、省エネルギー対策に取組んでいます。こうした取組みが認められ、以下の賞を受賞しました。
中水処理施設・雨水利用
飲食店舗からの厨房排水をはじめ、オフィスなどから排出される雑排水を中水処理施設によって浄化し、雑用水としてトイレの洗浄水などに再利用します。また、雨水も同様に、濾過設備を通して雑用水として再利用します。
エアバリア
エアバリアとは、ペリメータ部に小型排気ファンを設置して、日射など外部からの熱負荷の侵入を低減するシステムです。冬期は下部から吸い込むことにより、コールドドラフトを防止します。これによりペリメータ環境の快適性を高めるだけでなく、省エネルギーにも貢献しています。
屋上庭園
商業棟の屋上を緑化し、階下への日射負荷の低減や都市のヒートアイランドへの影響低減、景観向上など、環境保全に貢献しています。春には桜が咲くような自然溢れる空間であり、ビル入居企業様の従業員がお弁当を持ってお越しになるなど、憩いと潤いの場として多くの方に親しまれています。
ドライミスト
ドライミストとは、ノズルから噴霧される超微細な水滴の気化により、森のような涼しさを創出する屋外外気冷却システムです。噴霧エリアの気温を1℃~3℃低下させる効果が期待でき、地下1階サンクンガーデンの一部に設置しています。
地域共創の実現
ミッドランドスクエア商業棟の地下1階のアトリウムは、私たちが大切にしている空間の一つです。名古屋駅の地下街や周囲のビルとシームレスに繋がるこのスペースには、一日を通じて様々な人が行き交います。私たちは、ミッドランドスクエアの商業テナント・施設利用者の皆様と共に、このアトリウムを起点として、より一層魅力ある名古屋駅エリアの街づくりに寄与する活動を実施しています。
例えば、季節ごとに様々なテーマのもと開催される「SDGsマルシェ」では、アトリウムを訪れる皆様に対し、食べるもの、使うもの、身につけるものなどにおいて"サステナブル"な商品を心がけて選ぶライフスタイルを積極的に発信しています。また、毎年開催している「ミッドランドスクエア・アトリウムコンサート」では、新進のクラシック演奏家がピアノやバイオリンの音を響かせながら、まちの人々の心に潤いをもたらすことのできる場を提供しています。
その他、クリスマスの季節にはミッドランドスクエアや周囲の保有ビルの街路樹をイルミネーションで彩る取り組み(メイエキイルミ)や、毎月のビル周辺清掃活動なども実施しており、様々なアプローチから地域共創の実現に努めています。
新たな価値創造
2019年に誕生した「なごのキャンパス」と2020年に誕生した「axle御茶ノ水」。
どちらも、ベンチャー企業の皆様が中心となって入居しており、新しい産業を創出していく場として、当社が運営・管理している施設です。前者は廃校になった小学校の校舎を活かして、後者は会社の社員寮として使われていた建物を活かして、それぞれリノベーションを施して再生されました。
ご入居頂いている多種多様な業種・業態のベンチャー企業は、立ち上がったばかりのステージからすでに上場まで果たした段階まで様々であり、そのような企業同士が互いに交流し、繋がり、刺激し合うことができるような仕掛けが各施設内にはふんだんに取り入れられています。
志を持ったベンチャー企業の熱い想いは、今、日本や世界が直面している様々な環境問題や社会課題に対し果敢に対峙していく為の突破口となるのではないかと考えます。
私たちは、こうした場の提供を通じて、ベンチャー企業の熱い想いに寄り添い、共に夢を実現しながら新産業の創出に貢献して参ります。
エリアマネジメントを通じた地域との連携
「名古屋駅地区街づくり協議会(以下 名駅街協)」は、名古屋駅地区を多くの方が訪れ・働き・学び・住みたい街にするために、魅力向上を共に考え、提言し、活動する団体です。私たちは、その発起人の一員であり、設立当初の2008年から事務局として関与しています。
名古屋では、「栄」と「名駅(名古屋駅)」が中心的なエリアと言われています。「名駅」の特徴は、新幹線、JR、地下鉄、私鉄が集結し、中部国際空港へのアクセスも有すると共に、足元には複数の地下街が連なる、国内有数のスーパーターミナルエリアです。名駅街協は、そのような「名駅」のポテンシャルを活かして、より魅力的なエリアへと変革させていく為に、行政・企業・個々の地権者のみならず、その他多様なステークホルダーを巻き込みながら様々な取り組みを行っています。
リニア開業に伴い、名古屋市が再整備する駅前広場に関して、私たちとしてもありたい姿を検討するなどの中期的な取り組みから、街の清掃活動や歩道帯に花を植えるなど地道な活動まで、幅広く取り組んでいます。
さらには、セミナー・ワークショップの開催、広告付歩行者案内板・フラッグバナー広告・仮囲い広告の設置など、スーパーターミナルの玄関口にふさわしい賑わいと彩りをもたらすことができるよう、日々、試行錯誤を繰り返しています。
私たちはこれからも、地域に根差したデベロッパーとして、より一層地域との連携を深めながら魅力ある街づくりに貢献して参ります。
コンプライアンスの徹底・ 情報セキュリティの強化
私たちはトヨタグループの一員として、豊田綱領の精神を原点に経営理念を掲げ、常に社会から高く信頼される企業行動の実践に努めています。1953年の会社設立から約半世紀に亘り、当社は名古屋駅地区の不動産会社としての堅実な社風が特長でしたが、近年はトヨタグループのデベロッパーとして、事業の幅とエリアを大きく拡大させています。そのような中でも、コンプライアンスを第一としながら、企業として健全かつ持続的に成長し続けていくことは非常に重要なミッションであり、私たちはその達成の為、日々、様々な取り組みを実践し続けています。
具体的には、従業員の「行動指針」の策定とその浸透活動や、監査役・「法務・内部統制」組織による定期監査及び改善フォロー活動、不正防止対策・社内牽制機能としての「調達」専門組織の設置などが挙げられます。また情報セキュリティの面では、オールトヨタグループセキュリティガイドライン(ATSG)に準拠した機密管理規程の運用やネットワークセキュリティ水準の整備が実施されており、常に、情報の取扱いにも細心の注意が払われています。
その他、日常の業務における法令・企業倫理違反や従業員間のハラスメントを防ぐために、匿名で通報・相談できるヘルプライン窓口を設ける等、ステークホルダーの皆様と企業・従業員を守る仕組みを整えています。
働き方改革の推進
近年、当社はトヨタグループのデベロッパーとして事業の幅とエリアの拡大に力を入れており、それに伴って従業員数も年々増加傾向にあります。現時点では、2010年以降に入社した者の人数が、全従業員の内の半数以上となっており、年齢、性別、経歴など、様々なバックグラウンドを持った社員が在籍しています。私たちは、そのような社員一人一人の人格・個性を尊重し、その創造力とチームワークの総合力を最大限に発揮できる、ダイバーシティに富んだ企業風土の醸成に努めています。
具体的な取り組みとしては、オフィスのフリーアドレス導入によるインナーコミュニケーションの促進や、テレワーク推進と自律的な働き方の推奨、心の健康を守るセミナーや各個人のニーズに応じて選択できる目的別研修の開催などが挙げられます。
また、女性の活躍・仕事と家庭の両立支援という観点においても、育休の取得・育休からの復帰がし易いような制度・風土づくりや、短時間勤務・フルフレックスタイム制度を活用した両立支援の仕組みづくりなど、改善を重ねながら実施しています。
このように、多様性と自律性を尊重した様々な取り組みを通じて、強靭でしなやかな企業組織の形成に努めながら、引き続き多様性の実現を目指して参ります。